1. ホーム > 
  2. マレーシア・クランタン大学、香港城市大学 出張報告

マレーシア・クランタン大学、香港城市大学 出張報告

1.派遣の概要
 2025年度の教員海外派遣事業のご支援をいただき、マレーシア・クランタン大学(UMK)および香港城市大学(CityUHK)を訪問いたしました。今回の派遣は、アジア地域との海獣類研究の連携強化や将来的な学生派遣に向けたネットワークの構築を主な目的としました。

2.マレーシア・クランタン大学(UMK)訪問とASCM学会参加[期間:2025年10月12日〜16日]

・UMKについて
 UMKは首都クアラルンプールから飛行機で1時間ほどのタイとの国境近くのコタバルという街に所在しており、2006年に開校した比較的新しい大学で、マレーシア国内の2つの獣医学部のうちの1つがあります。

・ワークショップおよび学会について 

写真1(UMKの研究者による獣医学部の案内)

 マレーシアに到着した10月12日はUMKの獣医学部を訪問し、獣医学部を案内していただき、会場の下見をしました(写真1)。獣医学部は幹線道路沿いのビルの中にあり、1階には解剖実習室の他に人獣共通感染症、公衆衛生の研究室や爬虫類・両生類の研究室などが並んでいました。爬虫類・両生類の研究室では、様々な動物が飼育展示されており、学生たちが日常的に動物と触れ合えるユニークな教育環境が整っていました。一方、解剖実習室は窓ガラスが黒く覆われており、景観に配慮された構造になっていました。

 今回、Asian Society of Conservation Medicine(ASCM)学会がUMK獣医学部の主催で開催され、私たちは学会のワークショップの一つである「Marine Mammal Post mortem Workshop(海獣類の死後解剖)」のトレーナーとして講義および解剖指導を行いました。

写真2(解剖実習室での打ち合わせ)

写真2(計測の様子)

 13日のワークショップでは午前中に講義を実施し、小型鯨類の腸内容物の採取方法や細菌検査法(太田)および海獣類の比較解剖学(奥田)のレクチャーを実施しました。午後の実技ではスナメリ2頭とカワイルカ1頭の計測と解剖(写真2)、モバイルPCRを用いた病原体検出のデモンストレーションを実施しました。ワークショップ中は約20名の参加者と活発な質疑応答を交わしました。
 

写真3(モンゴルチームと集合写真)

14日〜16日はASCM学会に参加・発表をしました。会期中はモンゴル生命科学大学獣医学部のウヤンガー先生チームと再会しました(写真3)。ウヤンガー先生とは2024年度のASCM学会のモンゴル大会で知り合い、その後2025年9月にモンゴル生命科学大学に訪問したのを機に、今後共同研究を発展させるべく協議中です。またチームは新しく立ち上げたモンゴルの野生動物保全NGO活動で奮闘されており、本学の獣医学部ともマッチできる可能性を感じました。2026年のモンゴル訪問に向けた調整も円滑に進みました。

写真4(東アジア3か国の共同研究打ち合わせ後の集合写真)

 16日はワークショップを一緒に実施した東アジア3カ国、日本(国立科学博物館、宇都宮大学、岡山理科大学)、韓国(チェジュ大学のキム先生、PLAN OCEANのイ先生)、台湾(国立台湾大学のウェイチェン・ヤン・ジャック先生)の先生方とアジアにおけるスナメリの保全活動、特に韓国での研究環境の改善点について、日本や台湾でサポートできることなどについて具体的な協議を行いました(写真4)。

 

・主な協議内容

 今回はワークショップや学会を通じて、UMKの研究者や東アジアのスナメリ研究者と交流を深め、今後の共同研究について具体的に協議できました。UMKによるとマレーシアでスナメリやイルカが打ち上がることは年に1〜2回とのことなので、まだ海獣類の研究はこれからという印象を受けました。今回のワークショップにおける鯨類の解剖技術の共有が、今後の研究につながることを期待しています。また、2026年のモンゴル訪問についても円滑に進めることができ、今後の共同研究の推進につなげられる機会となりました。

3.香港城市大学(CityUHK)訪問[期間:2025年10月17日〜20日]

 マレーシアの学会後、CityUHKにてInternational Cetacean and Sea Turtle Symposium cum Workshop(国際鯨類・ウミガメシンポジウムとワークショップ)にご招待いただいたため、香港に移動しました。

・CityUHKについて 

写真5(シンポジウム参加者と集合写真)

CityUHKは香港市内の九龍に位置する大規模な総合大学で、世界ランキングの上位に入る香港屈指の大学です。獣医学部は2016年にアメリカのコーネル大学の協力を得て設立されました。本シンポジウムの主催者であるブライアン・コット教授の研究室では最新のCTやMRIを使用した海獣類の診断を行っており、世界中の水族館と共同研究を実施するなど潤沢な研究資金を持つ非常にパワフルな研究室です。今回のシンポジウムにはアジア、ヨーロッパ、南米・北米から約35名の発表者が集い、ブライアン教授の研究室だけで運行されているという圧倒的な規模感に感銘を受けました(写真5)。

・シンポジウムについて 

写真6(発表とコラボレーションのお誘い)

10月18日と19日は朝から夕方までシンポジウムに参加しました。我々は四国におけるストランディング対応(奥田)や鯨類の薬剤耐性菌(太田)について発表し、コラボレーションを呼びかけ、各国の専門家から有益な助言を得ました(写真6)。世界の様々な地域でのストランディング対応を聞きましたが、特に台湾の研究者たちの発表は印象的で、台湾各地に保護施設があり各地で保護活動やストランディング対応を実施しているようです。台湾の野生動物保護・救護に対する積極的な姿勢は大変勉強になりました。参加者間でストランディング対応を実施する難しさやストランディング情報の収集方法など問題点などを協議することができました。
 シンポジウムの初日終了後は、野生のウミガメのリハビリや治療法、そしてリリース法についてディスカッションを行い、参加者のウミガメ保護に対する熱意を感じました。このディスカッションは現在、レビュー論文としてまとめています。

・主な協議内容

 ブライアン教授は参加者間交流を非常に重視しており、すべての食事の場をセッティングしてくださったことで各国の参加者と深く交流することができました。主に以下の3点について協議することができました。

 香港へは高松空港から直行便で4時間、台湾へは松山空港から直行便で3時間と国際交流を深めるには絶好の立地です。特に今回訪問した香港城市大学は非常に国際的な環境で、欧米からの留学生も多く授業も英語で実施されていることから、言語の障壁は比較的低いと思われます。アジアにおいて、このように大規模な獣医療ができる大学を本学の学生にも体験してほしいと感じられる魅力的な大学でした。

4.派遣の総括

 今回の派遣を通じ、マレーシア・韓国・台湾・香港、そしてモンゴルを含む東アジアの海獣類研究や教育ネットワークを強固にし、共同研究の足がかりができたと感じます。また、学生を海外に派遣するための複数の候補先と直接関係を築くことができました。今後は今回構築した関係をベースに、学術協定の締結や定期的な学生交流プログラムの策定などを目指せればと考えます。

 最後になりましたが、このような貴重な機会をくださった関係者の皆さまに改めて厚く御礼申し上げます。

報告者
獣医学部 獣医学科
疫学講座 助教 太田奈保美
野生動物学講座 講師 奥田 ゆう

 

 

 

 

 

Copyright ©2019 OKAYAMA UNIVERSITY OF SCIENCE.
All Rights Reserved.