岡山理科大学獣医学部
国際獣医教育研究センター
国际兽医教育研究中心
國際獸醫教育研究中心
국제 수의 교육 연구 센터
ศูนย์ศึกษาและวิจัยด้านสัตวแพทย์นานาชาติ
Trung tâm nghiên cứu giáo dục thú y quốc tế
Pusat Pendidikan & Penyelidikan Perubatan Veterinar Antarabangsa
Pusat Pendidikan dan Penelitian Veteriner Internasional
弘光科学技術大学(以下、弘光科技大)は台湾・台中市において1967年に創立された総合大学(私立)であり、現在は5学部21学科が存在する。台湾は教育機関の国際化や国際交流に国家として力を入れており、弘光科技大は留学生に対して学費の半額免除やドミトリーを整備するなど、手厚いサポートを提供している。また、弘光科技大・医療健康学部には日本の獣医保健看護学科に相当する動物保健学科(現地では動物保健系と表記されている)があり、動物看護師を目指す若者たちが勉学に勤しんでいる。
昨年、弘光科技大・医療健康学部・動物保健系で教授を務めておられる林永昌(Lin, Yung Chang)先生から、本学・獣医保健看護学科に対して大学間協定締結についての申し入れを受けた。林先生がかつて東京大学農学生命科学研究科獣医学専攻で学んだ経験をお持ちであったことから、同大出身者である私が窓口担当者として対応することとなり、大学間協定に向けた様々な準備を現在進めている。例えば、弘光科技大には獣医学科が無いため本学の教育病院を学生に見学させて欲しいという要望を林先生から受けたため、獣医学部長や病院長に相談し、見学人数の上限や時期などの条件を設定したうえで承諾を得られた。一方、本学・獣医保健看護学科でも教員間で意見を出し合い、仮に本学の学生が弘光科技大を訪問した際に見学・体験させたいことをリストアップして先方に提出したが、大学施設も含めて現地を視察することが必要であるという結論に至り、今回の弘光科技大訪問に至った。
愛媛県から台湾へは松山空港~台北桃園空港間の直行便があるが、フライトの曜日や出発時間が指定されているため、今回は最短となる3泊4日(注:復路便の出発時間が早朝だったため最終日の夜は空港で過ごすこととなり、実際には2泊4日)の旅程を組んで現地視察に向かった。台北桃園空港から台中までの移動手段は鉄道(新幹線)と高速バスの2種類があるが、前者は在来線への乗り換えが面倒と感じられたため、今回は安価かつ乗り換えが不要の高速バスを利用することにした。乗車時間は約2時間30分ほどであったが、座席が比較的大きめに作られていたので大して疲労を感じることもなく台中駅に到着することが出来た。台湾では鉄道の駅構内での飲食が禁じられているため、将来的に学生たちが台湾を訪れる際には高速バスを勧めたい。台中駅に到着後、しばらく周囲を散策してみたが、日本統治時代の旧駅舎が遺構として残されているほか、街全体にどことなく懐かしさや親しみを感じるというのが第一印象であった。その後、初日は移動日だったため宿泊予定のホテルに直行し、翌日以降の見学に向けて体調を整えた。
現地2日目は林先生と陳劉獻(Liu, Hsien-Yueh)先生がホテルまで自家用車で迎えに来てくださり、そのまま見学へと向かうことになった。この日は大学が休日だったため、まずは台中市内の動物関連施設などを見学することとなった。残念ながら弘光科技大にも付属牧場施設はないということであったため、公共獣医事分野については食鳥処理場や動物保護施設、動物園などの見学を希望リストに上げていた。これらの施設はいずれも見学が可能とのことであったが、日本に帰国した際のリスクも考慮して、今回は外部から施設を見るのみに留めた。台中市内の動物病院などもいくつか紹介して頂いたが、最も興味深かったのは、台中市内には野生動物専門の動物病院が複数設置されているということであった。

野生動物専門動物病院の外観
これらの動物病院には負傷した野生の鳥類や爬虫類などが持ち込まれるそうで、日本にはない独自のスタイルに非常に興味を覚えた。また、台中市には野生動物のレスキュー活動を行っている国立機関も設置されており、事前に書類申請を行えば見学可能とのことであったので、大学間協定が締結された際には市内の野生動物専門病院ともども、ぜひ本学の学生達に見学させたいと申し入れた。
最終日となる3日目は弘光科技大の学内施設を見学させていただくとともに、動物保健系の学生を対象に、本学・獣医保健看護学科の紹介をセミナー形式で行った。学内施設の見学についてはまず、本学の学生が弘光科技大を滞在する際に使用するであろうドミトリーを拝見させていただいた。

ドミトリーの外観
ドミトリーは留学生と台湾の学生がともに使用することが前提になっているそうで、現在もほぼ全ての部屋が使用されているとのことであった。今回は見学時の時点で空室になっている4人部屋を見学させていただいたが、2段ベッドが2つ設置された室内には十分なスペースがあり、トイレ・バスも室内に完備されていることから、女性が大多数を占める本学・獣医保健看護学科の学生も安心して使用できると感じた(男性と女性はフロアが分けられているとのこと)。

ドミトリー4人部屋
また、ドミトリー内には自販機やフィットネスルーム、eスポーツ専用ルーム(ゲーム用PCの置かれたデスクが数台設置されていた)、ミーティングルームなどが設置されており、学生間の交流を深める様々な工夫が施されていた。続いて食堂を見学したところ、日本の学食とは異なりフードコートスタイル(5~6種類の店舗が入っている)が導入されており、日によって食べたいものを自由に選択できることから学生たちの人気も高いとのことであった。もちろん、コンビニエンスストアやカフェテリアも校内に完備されており、将来ここを訪れた今治キャンパスの学生達は大きなショックを受けるのではないかと感じた。

フードコートスタイルの学食
学内の施設(教室や実習室)は本学・獣医学部と比べると年季を感じる古めかしいものであったが、そこかしこに最新技術が導入されており、見た目とのギャップに驚くこともあった。例えば私がセミナーを行う際、教室のホワイトボード(黒板ではない)をスライドさせると裏側にタッチパネル式の大型スクリーンが出現し、PowerPointファイルを記録させたUSBメモリーを直接差し込むと、それだけでプレゼンテーションができるというものであった。林先生の話では、国からの補助金で全ての教室にこれらスクリーンが導入されているとのことで、私立大学に対しても充実した教育支援を行う台湾の懐の広さに大いに感心した。
以上の現地見学を終えて帰国の途に就いたが、大学間協定を結んだ際にはお互いの強みを生かすことでwin-winの関係になれるのではないかと考える。先方は本学の教育病院棟を見学することで小動物臨床の見識を広げることが可能となり、本学の学生は野生動物の関連施設を見学することで、普段の講義や実習では触れる機会が少ないエキゾチックアニマルの見識を広げることが可能になる。今後、大学間協定の締結に向け、関係各所と協力して進めていきたいと考える。
報告者
獣医学部 獣医保健看護学科
実験動物管理学講座 教授
木村展之
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