岡山理科大学獣医学部
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Pusat Pendidikan & Penyelidikan Perubatan Veterinar Antarabangsa
Pusat Pendidikan dan Penelitian Veteriner Internasional
2025年9月8日から9月15日にかけて、モンゴル国立生命科学大学(MULS:写真1)獣医学研究所(IVM)および獣医学部を訪問いたしましたので、ここに報告させていただきます。
モンゴル国と岡山理科大学(OUS)は幅広い分野で交流を進めており、2013年に生物地球学部がモンゴル科学アカデミー古生物学地質学研究所と相互協力協定を結んで以来、2017年にはモンゴル国立教育大学と、2018年には今回訪問したMULSと教育・研究協定を締結しています。MULSはモンゴル国唯一の獣医学部を有する大学ですが、これまで両大学の獣医学部間における研究・教育交流は十分に行われていないのが現状でした。また、同大学の附属機関であるIVMとも、これまで交流はありませんでした。 今回の訪問は、MULS獣医学部およびIVMにおいて、今後の具体的な研究・教育連携の構築に向けた視察および協議を行うことを主な目的としました。
I.MULS獣医学部とIVMの立地・環境
MULS獣医学部とIVMは隣接しており、いずれもウランバートル市内の郊外に位置しています。モンゴル国では公共交通機関がバスに限られており、移動手段は基本的に自動車となります。市内中心部は慢性的な大気汚染が見られますが、郊外に位置する両施設周辺は空気が非常に良好です。同地域は住宅地として人気が高く、幼稚園や小学校が隣接するなど治安も安定しています。 また、敷地の向かい側には大型のショッピングモールがあり、飲食店やスーパーマーケットが充実しています。MULS学内にも学生食堂が完備されており、早朝から夜間まで、安価でボリュームのある食事が提供されています(写真2)。なお、街中では基本的にモンゴル語のみが通じる環境ですが、スマートフォンの翻訳アプリ等を活用することで、最低限のコミュニケーションは十分に可能でした。
II.研究交流の可能性
1)獣医学部間における共同研究について
モンゴル国において畜産業は経済の基幹産業であり、特に「五畜」(ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ラクダ)が重要視されています。近年、家畜頭数の増加に伴い、感染症の流行や加工・流通時における衛生管理が大きな課題となっており、獣医学分野がその解決において重要な役割を担っていることは明白です。今回の訪問に際し、事前に連絡を取り合っていた獣医学部病理学研究室のErdemsurakh Ochbayar先生より、昨今モンゴル国内で流行している「ウマの流産」へのウマヘルペスウイルスの関与を検証したいとの提案をいただきました。現地での対面協議の結果、互いの研究関心が一致していること、またそれぞれの得意分野(ウイルス学と病理学)が相補的であることを確認し、共同研究を始動する合意に至りました。
共同研究の実施にあたっては、現地で採材したサンプルの解析が不可欠となります。しかし、モンゴル国が「名古屋議定書」に批准したことに伴い、生物資源の国外持ち出しや利用への法的な制限が厳格化されており、サンプルは原則としてモンゴル国内で解析する必要があります。そこで本滞在期間中、MULSおよび近隣施設において必要な解析を実行できる環境が整っているかを確認するため、Ochbayar先生らが事前に採材していたサンプルを用いてパイロット実験を実施しました。その結果、MULSはJICAやKOICAからの支援を受けていることもあり、ディープフリーザー、インキュベーター、遠心機、サーマルサイクラー、ゲル撮影装置、サンガーシーケンサー、プレートリーダー等、最新の基礎研究機器が配備されていることが確認できました。これにより、現地でも不自由なくELISAや遺伝子解析を行える環境であると判断いたしました。
海外共同研究特有の「渡航費等の研究費獲得」という今後の課題はあるものの、研究対象の合致に加え、実務的な共同作業の流れを実地で確認できたことは大きな成果です。また、今回の施設利用によって得られた知見は、OUSの他研究室の教員が今後MULSで共同研究を展開する際にも非常に有用な情報になると考えます。更に、実験施設を利用した際、病理学以外の主要講座(微生物学、公衆衛生学)の教員もご紹介いただきました。同学部では感染症対策が極めて重視されており、今後は細菌学や衛生学の分野でも共同研究の需要が強く存在することが分かりました。教員の多くが日本の大学で学位を取得していることから、共同研究を通じた将来的な留学生誘致の可能性も大いに期待されます。
2)IVMとの研究交流について
これまでOUSと交流がなかったMULS附属研究所(IVM)を訪問し、ウイルス学研究室長のErdenechimeg Dashzevge先生と面談いたしました(写真3)。当日は同室の訪問に加え、IVM所長のBattsetseg先生にも表敬訪問する機会をいただき、IVMにおける日本の研究機関との共同研究の歴史や現状についてお話を伺うことができました。その後、Dashzevge先生のご案内でIVMの施設を視察するとともに、同研究室の研究内容について説明を受けました。私からも自身の研究内容や関心についてプレゼンテーションを行い、今後の連携の可能性について協議いたしました。IVMは帯広畜産大学との共同研究の歴史が長く、近年では北海道大学ともSATREPS等の大型外部資金を活用し、国内の家畜感染症研究に取り組んでいます。感染症研究の技術・知識に優れた研究者が多数在籍しているだけでなく、豊富な人的ネットワークを有していることから、双方のニーズが合致した際には、大規模な共同研究を展開できる極めて魅力的な組織であると感じました。
III.教育交流の可能性
獣医学部のOchbayar先生のご案内のもと、学部棟のほか、大動物実習施設、附属動物病院を視察いたしました。また、新学期の開始時期と重なっていたため、講義や実習の様子も拝見しました。MULS獣医学部には1学年約100人の学生が在籍しており、大学院(修士課程)へ進学する学生も一定数存在します。ただし、講義は基本的にモンゴル語で行われており、学生の英語習得レベルはOUS獣医学部の学生と同程度という印象を受けました。そのため、OUSの学生が現地で通常の講義や実習に直接参加することは、言語の壁や規模の観点から現状ではハードルが高いと考えられます。一方で、共同研究の枠組み等を活かし、遊牧の現場や食肉加工プロセスの見学といった「短期フィールドワーク」の形であれば、教育プログラムとして実現できる可能性が十分に見出せました。また、多くの教員が北海道大学、岡山大学、山口大学などの日本への留学経験を持っており、非常に流暢な日本語を話す教員も多く、親日的な土壌があります。今後、共同研究の進展に伴い、現地の優秀な学生を留学生としてOUSへ受け入れる体制の構築が十分に期待されます。
おわりに
最後になりましたが、本海外派遣の機会をいただきました学内関係者の皆様に深く御礼申し上げます。また、新学期の多忙な時期にもかかわらず、終始温かく丁寧におもてなしいただいたOchbayar先生をはじめとするMULS獣医学部の先生方、ならびにSATREPS事業等の多忙なスケジュールの合間を縫ってご対応いただきましたDashzevge先生をはじめとするIVMの先生方に、心より感謝申し上げます。
報告者
獣医学部 獣医学科
微生物学講座 講師
藤井ひかる
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