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コペンハーゲン大学獣医学部訪問報告

デンマークの首都コペンハーゲンで開催されたICAHS4学会(5月2日〜5日)に参加し、コペンハーゲン大学獣医学部を訪問したので報告致します。
 Covid-19の影響でここ数年間は海外との往来が難しい状況でしたが、デンマークを含むヨーロッパ諸国は2022年に入りオミクロン株の流行とワクチンの接種状況を鑑みて他国よりも一早くコロナ関連の入国規制を完全に撤廃しました。この撤廃により2年間開催が延期されてきた4th International Conference for Animal Health Surveillance (ICAHS4)学会を対面で実施することが決定したこととワクチン接種済みであれば日本に帰国後の待機期間がなくなったため、この度海外学会への参加が実現しました。

<ICAHS4について>
この学会は動物の健康衛生全般に関するサーベイランスのデータの収集法・活用法・政策への反映など幅広い演題が含まれ、通常よりも政府系の研究者の参加が多い学会という印象でした。学会の参加者は総勢222名ほどでまだ各国の移動制限があることから近隣の欧州諸国からの参加者が8割を占め、アメリカ・カナダが1割ほど、他の地域からは各国1〜2人程度の参加者でした。日本からの参加者は私1人でした。
 学会では国際獣医教育研究センターのホームページ上で公開している感染症データのダッシュボードについてポスター発表を行いました。興味を持っていただけましたが、ダッシュボードについての発表が他にもいくつかあり、ただデータを公開するだけでなく、データに使われている計算方法やダッシュボードを研究や政策へ反映する方法などを示すことの重要さを感じました。今後、新たにダッシュボードを作成していく上で参考になることが多く非常に勉強になりました。

<コペンハーゲン大学獣医学部>
 コペンハーゲン大学の獣医学部は1856年に設立された王立獣医農業大学を前身とし、コペンハーゲン中心部に位置する小動物臨床や微生物学部などがあるフレデリクスベアキャンパスと街から30分ほど離れた大動物臨床のキャンパスに分かれています。今回はフレデリクスベアキャンパスの臨床微生物学と疫学の先生方を訪問しました。
獣医学部の歴史ある建物がキャンパスに点在しています。

 

獣医学部は1学年180人ほどで5年半のプログラムとなっています。今はデンマーク唯一の獣医学部ですが近年新しい獣医学部がデンマークの北西部に作られる予定だそうです。学生を分散させるため、コペンハーゲン大学の入学定員は減り、アニマルサイエンス学部もそちらに移行すると伺いました。新たな学部を作るにあたって、獣医学部間で戦略的に学生数を調整している点で日本との高等教育システムの違いを感じました。デンマークでも多くの学生が小動物臨床に向かい、公衆衛生や大動物臨床の獣医師は不足しているそうです。またデンマークは日本のように数多くの島から成り立っているため、車で3時間の移動はかなりの遠距離という認識で地理的な要因もあって新たな獣医学部の設置が決まったようです。

今回訪問したのはClinical Microbiologyの学科長のDr. Olsenと疫学者のDr. KirkebyとDr. Damborgです。まずはDr. Olsenにキャンパスツアーに連れていただきました。歴史を感じる建物を利用して実験動物施設や動物病院、各部門が点在しています。キャンパス内の動物病院の内部は最新の設備を備えていました。キャンパス内には多くの市民が自由に訪れることのできるガーデンがあり、訪れた市民たちがゆっくりできるカフェを学生が自主的に運営しているそうです。キャンパスツアーの後は3人の先生方とミーティングを行い、まずは岡山理科大学獣医学部の紹介をさせていただき、日本の獣医学部の現状について興味を持ってくださいました。17もの学部があることに大変驚いていました。その後お互いの研究紹介や今後の共同研究の可能性などについて話し合いました。Dr. Olsenは動物の薬剤耐性菌の検査を中心に約15人ほどの学生や研究者を抱えるラボを運営されています。常に世界中から多くの留学生を受け入れていて、日本から受け入れることもできるとおっしゃってくれました。
 今回の訪問は獣医保健看護学科を3月に退官された永幡先生のお知り合いのコペンハーゲン大学の先生から先生方を紹介していただきメールでのやり取りののち実現しました。初対面にも関わらず、非常に親切に対応してくださりデンマーク人の懐の深さを感じました。Clinical Microbiologyでは中国の大学と提携を結んでおり、多くの中国人学生が派遣されているようでした。今後はまずは研究交流から始め、将来的には学生の派遣についても検討できる関係性を築いていきたいと考えます。
 今回の学会参加ならびにコペンハーゲン大学訪問の機会を与えてくださった国際獣医教育研究センターに深謝致します。この機会を糧に今後もセンターの感染症ページの充実とコペンハーゲン大学との交流の発展につなげていきたいと考えています。

報告者       
獣医学部 獣医学科
疫学講座 助教
太田奈保美

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