岡山理科大学獣医学部
国際獣医教育研究センター
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국제 수의 교육 연구 센터
ศูนย์ศึกษาและวิจัยด้านสัตวแพทย์นานาชาติ
Trung tâm nghiên cứu giáo dục thú y quốc tế
Pusat Pendidikan & Penyelidikan Perubatan Veterinar Antarabangsa
Pusat Pendidikan dan Penelitian Veteriner Internasional
モンゴル国は人口約300万人、日本の5倍の国土に9000万頭の家畜を抱える畜産大国です。去る2022年9月3日から9日まで、国枝哲夫、鍬田龍星、井上陽一の3名でモンゴルに出張いたしました。この間、国立モンゴル生命科学大学(MULS)獣医学部(獣医学校)を訪問し、またこれと併せて、好適環境水によるモンゴル初の海水魚養殖の成果報告レセプションへ参加、さらに首都ウランバートル近郊の畜産関連施設も視察いたしましたのでご報告いたします。今回の旅費は国際獣医教育研究センター教員派遣事業から支出して頂きました。
1)好適環境水によるモンゴル初の海水魚養殖の成果報告レセプションへの参加
この研究成果は、本校工学部バイオ・応用科学科の山本俊政先生らのグループによるものであり、今回のレセプションには山本先生、平野博之学長、富岡直人副学長も参加されました。日程が重なったため我々も参加させて頂きました。会場では成長した交雑種のハタの生体が展示され(写真1)、その身肉の試食もさせて頂きました。海のないモンゴルにおける海水魚養殖の成功は、単に内陸部での海産資源供給が可能になっただけではなく、成長促進、疾病管理などの面でも様々なメリットがあると思われました。他分野の研究をされておられる先生方とゆっくりお話しさせて頂けたことも大変刺激になりました。海のないモンゴルにおける海水魚養殖の成功は、単に内陸部での海産資源供給が可能になっただけではなく、成長促進、疾病管理などの面でも様々なメリットがあると思われました。他分野の研究をされておられる先生方とゆっくりお話しさせて頂けたことも大変刺激になりました。
2)畜産関連施設の視察
今回7か所の畜産関係施設を視察しました。これらの施設を、鍬田先生のご友人でありMULS獣医学部教官のボルドー先生と、静岡モンゴル親善協会の北川様にご案内いただきました。以下、各施設の概要を記します。
① 家畜市場とそれに併設する簡易食肉処理施設
主にヒツジ・ヤギの生体を持ち込み、その場で売買する。当日は約100頭のヒツジとヤギが繋留されていた。簡易食肉処理場が併設されており、購入者は処理料を払ってその場でと畜・解体してもらうことができる。伝統的なと畜が行われており、四肢と口吻を結紮し腹部正中を手が入る程度切開。腹腔内において指で大血管を切断する。このため、血液がほとんど体外に出ない。血液は洗った腸管に詰めてソーセージにする。毛を焼くための窯も併設されている。
② 小規模食肉処理施設
視察当日はウマが5-6頭、ヒツジが30頭程度繋養されていた。日本のウシの耳標のような個体識別システムはないが、担当の獣医(民間)が牧場出荷時、食肉処理場搬入時の生体、および解体後のと体について頭数、性別、毛色等を確認、写真撮影等を行い、その都度携帯端末などからオンラインで管理省庁に報告するシステムを導入していた(写真2)。
③ HACCPを実践している大型食肉処理場
内部の見学は2名、10分間のみ許可された。専用の白衣(滅菌済み)、ブーツカバー、ヘッドカバー着用義務あり。大家畜(ウシ)と中家畜(ヒツジ・ヤギ)のレーンに分かれている。内部はとても清潔で消毒のための各種装置等も充実しており、一見日本の食肉処理場と遜色ない印象を受けた。と殺方法、一日処理可能頭数については聞き忘れた。
④ 食肉卸市場とこれに併設する衛生検査所
モンゴルでは一般的に五畜(ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ)といい、ブタやニワトリはこの中に含まれない。と体は枝肉本丸の状態でトラックで市場内に持ち込まれて売買される(写真3)が、購入者の希望によってバルク(1車)、骨付き、脱骨済み、指定部位のみ、などの場内での後処理が可能で、これにより価格も変動する。視察当日、この食肉卸市場でもこれら五畜すべてを取り扱っていた。この日の卸価格は、ウシが最も高く(約650円/kg:高値、脱骨済み、以下同)、次いでヒツジ(約430円/kg)、ヤギ(約420円/kg)、ラクダ(約410円/kg)、ウマ(約370円/kg)の順であった。場内には公からの委託を受けた衛生管理獣医師(民間)が常駐しており、事務所内には検査のための設備もあり、持ち込まれた精肉の細菌検査等を行っている由。
⑤ ウシ・ヤギ・ヒツジの遊牧農家
遊牧者においては土地の使用量は無料(概念がない)。このため草が無くなればゲルと呼ばれる移動式住居とともに他の場所に家畜ごと移動する。草原の中を舗装道が通っているが、もし家畜と車の接触事故が起きた場合、家畜がケガをしたり死亡しても車の運転者に賠償責任はなく、逆に車が破損した場合には家畜の飼養者は賠償責任があるとのこと(写真4)。
今回お邪魔した遊牧者のご家庭(写真5)では、ウシ30頭、ヤギ・ヒツジ約200頭を遊牧しておられた。搾乳は朝・晩の1日2回。子牛はゲルの脇の簡易柵内に入れられている。夕方、メスウシがゲル付近に帰ってくると、子牛は柵から出されて母乳を直接飲み、その残りの乳を搾乳していた。搾乳時は前肢のみ8の字にロープをかけるが、その他の保定はなし。1頭当たりの搾乳時間は2-3分。バケツに手搾り。乳量は目算で約2-3L/頭。
⑥ 近代的設備のある酪農家
近年、ウランバートル近郊では定住型の畜産農家が増えている由。その一軒の酪農家にお邪魔した。飼養頭数は搾乳牛20頭と育成牛・子牛約30頭(すべてモントベリアール種:写真6)。
放牧地(広さ不明:電気牧柵)が隣接しており、夏期の日中、搾乳牛は放牧されている(写真7)。
同規模の畜産農家があと4軒、計5軒が隣接しており、酪農団地になっている(写真8)。
集乳は2日に1回、共通の集乳車が集乳に来る。畜舎はタイストールで20頭×2列の尾合わせ、搾乳は1日朝晩2回、ストール脇のパーラー(6頭シングル:デラバル製)で搾乳する。乳量は日量10-15kg/頭。バルクタンクは1t(2.4℃)。粗飼料は近隣農家が作っているヘイ(草種不明)を購入、配合飼料(コーン、ペレット:モンゴル語表記にて内容不明)とTMRミキサーで混和して給与している由。現在種雄牛はおらず、担当の獣医師がAIしているとのこと。治療もその獣医師が行っており、現在は乳房炎が多発して困っているとのこと。乳熱は経験したことがない由。5年前から現スタイルの畜産を開始した。モントベリアール種のメスは導入時育成牛で約50万円とのこと。オスも種雄牛候補として高値で売れるので、オス子牛の去勢はしない由。
⑦ ウマ専門の個人開業病院
モンゴルでは毎年7月にナーダムと呼ばれる約35㎞の草原を走破する子供競馬が開催されており、近年その賞品が高額となっていることから、特に富裕層の馬主が増え、それに伴ってレース馬の臨床獣医師の需要が増えているとのこと。給与面でも他職種と比較して条件が良いとのことで、獣医学生の志望も多いとのこと。今回訪問した馬の開業病院は、このナーダムの会場の近くに立地し、院長以下6名の獣医師がシフトを組んで24時間体制で外来、および入院患畜の治療にあたっているとのことだった。訪問時には6名のMULSの獣医学生がインターンとして参加していた(写真9)。
これまで、ナーダムにはモンゴルの在来馬が用いられてきたが、賞金・賞品の高額化に伴ってウマの改良熱が激化し、近年では海外から導入した軽種馬との交配が行われており、問題になっているとのこと。下の写真は今年2着の馬。
3)MULS獣医学部(獣医校)訪問
当校とMULSは2018年に教育・研究交流協定を締結しており、その際、両校の獣医学部間においても覚書を交わしています。今回、その具体的な進展について両校の教員で話し合う機会を設けていただきました。
当日はまずキャンパス内を案内していただきました。先方ではちょうど後期の授業が始まった直後で、3年生の薬理学の実習が行われており、伝統的な薬草を用いた家畜飼料添加物の作製をされておりました。ミーティングには学部長のゴンボジャブ先生以下10数名の先生方にご参加いただき、当校の施設や、参加教員の個人研究を含む当校教員の研究分野の紹介を行いました(写真11,12)。
畜産の盛んな国だけあって、お会いした先生方の研究内容も家畜に関するものが多い印象を受けましたが、近日小動物の診療施設が稼働開始するとのことで、この分野での当校との連携も希望されておられました。また当校へ留学希望の学生に対して、学生生活などの個別説明を行うことができました。
個別には、国枝先生、鍬田先生のご両名ともモンゴルにおけるカウンターパートとなる研究者との十分な情報交換ができたご様子でした。私自身も、先方でヤギとウマの乳と寄生虫の研究をされておられるNyam先生との知遇を得ることができ、今後の研究交流をお約束することができました。
今回、畜産資源の豊かなモンゴルにおいて、様々な分野の研究者・教育者、畜産現場の方々と交流できましたことは幸甚でした。近隣に畜産資源が少なく、家畜と接する機会の少ない当校の学生にとっても、モンゴルの畜産を体験することはとても魅力的であると思われます。今後、研究面のみならず、教育面での交流の機会も増やせればと思いました。
このような機会を与えて頂きました事に改めて深謝いたします。
報告者
獣医学部 獣医学科
動物衛生学講座 教授
国枝 哲夫
人獣共通感染症講座 准教授
鍬田 龍星
産業動物臨床学講座 講師
井上 陽一
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