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豚熱(CSF)・アフリカ豚熱(ASF)対策のための養豚場における衛生管理

第1回Web講演会開催報告

日 時:2020年9月10日(木)9時~9月30日(水)17時
     (追加公開 10月6日(火)~10月23日(金))
方 法:YouTubeを使用した講演動画の限定公開
申込者:162名(愛媛県76名、高知県34名、香川県14名、徳島県29名、学内9名)
主 催:岡山理科大学獣医学部国際獣医教育研究センター
演 者:有限会社あかばね動物クリニック 伊藤 貢 先生
『CSF&ASFから養豚場を守るために出来ること』
今枝アニマルクリニック 今枝 紀明 先生
『CSFの発生に対する対策とそこから学んだこと』
視聴回数:紹介動画152回 伊藤先生ご講演 192回 今枝先生ご講演 153回

視聴後にお寄せいただいた質問と演者の先生からのご回答

先生方への質問とご回答

(質問)実際に豚熱が起こった際の、行政機関(市町等)との連絡体制、連携体制はありますでしょうか。また実際に起こった際に、問題となった点はどのような内容でしたでしょうか。
(伊藤先生)国、県、市町村との連携体制は問題ありませんでした。我々の地域では、家畜保健衛生所の所長や県の課長が泊まり込みで現場での状況の把握、指導を行っていました。市町村は、地域の消毒ポイントをJA経済連と連携して実施しておりました。2010年の口蹄疫の時も現地に私は農水を介して行っているが、当時に比べ国県市町村の連携はスムーズで問題は無かった。
 問題では無いが、発生確認から24時間以内に埋却することが上限でこれを最も妨げているのが埋却地の決定でした。あとは、現場はかなり混乱しますので、十分な机上演習は必要です。
(今枝先生)市町村との連絡体制、連携体制について、詳細については不明ですが、集合場所の選定、住民説明会の会場選定、集合場所での対応に関与されていたことから、あったと思います。
 問題点については、具体的な関与をしていなかったので、残念ながらどの様な事例かは掌握しておりません。しかし当初は当然何らかの問題はあったと推察されます。

伊藤先生への質問とご回答

(質問)最後に見せてくださったビデオの出版元が知りたいです。とてもわかりやすく現場の人と意識共有に使えたらと思います。
(伊藤先生)ビデオはこちらをご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=NhKJNdtEr84
https://www.youtube.com/watch?v=pazoTbHyYHU

(質問)発生農場の近隣の農場について、豚が感染していないにもかかわらず、予防的殺処分を行わなければならない場合の判断は非常に困難であると考えられます。早期出荷で対応できる場合と、予防的殺処分を行わなければならない判断基準を教えてください。
(伊藤先生)一番難しい決断になります。それが良いか悪いかの判断は、狭すぎると拡散になりますし、広すぎると必要なかったと批判されます。何が適正なのか正確な判断は出来ないと思います。目的は拡散防止なので、答えは拡散しないように広くとることです。
 判断する基準は、地域の密集度合い、その農場の衛生レベル、人と物の関連性、野生動物の生態状況と発生が確認された時の状況です。発見時が侵入から時間がたっているのか、入ったばかりなのか判断は血液検査と農場の状況から判断します。今から準備することは、野生動物が多いか少ないかこれらが判断できるように、地域の行政は農場と地域の衛生レベルを上げる指導と野生動物の調査はお願いしたいです。

(質問)現在当市の養豚場では2.4メートルのワイヤーメッシュの柵で全体を囲っており併せて防鳥ネットを利用して対策をとっています。しかしやはり防護壁で囲った方がよいのでしょうか。農場の出入り等についても安全衛生に十分注意しておりますが、あらゆる対策をとっても防ぎきれない場合があると思われます。先日の群馬県の発生事例もふまえ、防疫対策上の新たな知見があれば教えてください。
(伊藤先生)ダブルで防護壁がベストです。これを何処まで近づけるよう実行できるかになります。野生動物対応についてはこの方法が推奨されています。
 私が推奨しているのは柵の高さは2m、更に柵に1mの高さのトタンを貼り付けます。さらにその上に電柵を張ることでネコの侵入を抑えています。

(質問)第一発見者が非常に辛い思いをしたとのことですが、速やかにそれを報告することができなかった要因がどこにあるのか教えてください。
(伊藤先生)岐阜では、異常があることを診療に来る獣医師には伝えていました。しかし、熱射病や他の病気と診断したため、CSFを疑わなかった。同様に家畜保健衛生所も検査が最初は陰性だったことが遅いと言われる理由です。獣医師は、常日頃から重要疾病を否定できる勉強は必要であります。
 CSFの問題は、野生動物に感染してしまい、最初の頃はイノシシの対応が分からず、イノシシを拡散してしまった。これは日本では今まで野生動物に感染した経験が少なかった為です。イノシシの事を知る獣医師がいないため、アドバイスをイノシシの専門家に求めたことが対応の遅れに繋がったと思います。イノシシの専門家は病気の専門家とは異なり、対策が違う感じを私は当初から感じていました。
(今枝先生)私の個人的意見としては、獣医学教育の中で家畜衛生学がしっかりと行われていなかったことにより、現場で異常を認識した場合の対応手順(法定伝染病の否定→届け出伝染病の否定→疾病の診断)が身についていなかった事が大きな問題点であると思います。
 また、我々獣医師は、常に農家やお客様の所に病気を持ち込む可能性が大きいという認識を持つべきで、岐阜での初発事例における獣医師の対応は非常に問題があったと感じています。
 第一発見者である農家経営者は、問題を起こすような人ではなく、やはり周りのサポートする体制に問題があったと言わざるを得ません。(簡単に言えば日頃の付き合い方が重要)
 伊藤先生と同様、イノシシの専門家の意見は感染症に対する見識が少ないため、イノシシ対応に関する対応には疑問がありました。

今枝先生への質問とご回答

(質問)防疫作業後、汚染を広げないようにコインランドリーで着用していた衣服を洗濯、乾燥されたとのことでしたが、CSFウィルスは通常の洗濯・乾燥で死滅させることが可能なのでしょうか。例えば、新型コロナウィルスにはアタックZeroが効果的との実験結果が発表されていますが、豚熱ウイルスに効果的な洗剤等お判りになりましたらご教授ください。
(今枝先生)
豚熱は通常の洗濯・乾燥では死滅させる事が出来るか?
 結論は、可能です。洗剤は通常キレート化合物を含んでいますので効果はあります。さらにアルカリ性洗剤を使用すれば効果はさらに期待できます。また、乾燥にはコインランドリー等に設置してある乾燥機を利用すれば効果はあると思います。CSFウイルスは80℃で3分以上暴露すれば死滅することが報告されていますので、乾燥機の温度が何度まで上昇するのか確かめる必要があります。
効果的な洗剤は?
 コロナウイルスもCSFウイルスもエンベロープを持っていますので、キレート剤が含まれていれば効果はあります。より一層の効果を期待するのであれば、私の知っているアルカリ性洗剤(フィーネナチュラル、ハイブリッドウオッシュスーパー)がフィーネナチュラル(株)から販売されています。

主催者への質問

(質問)岡山理科大学のHP等で視聴できるようになるか。
(センター)現段階では考えておりませんので、ご希望があればセンターまでご連絡ください。

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